本を読むときに「全部覚えなければ意味がない」と思い込んでいませんか。私もかつては一言一句を記憶しようと必死になり、1冊200ページの本を読み終えるのに2日かかっていました。その結果、年間の読書量はわずか30冊ほど。けれどもある時、「読書は100%覚える必要はない」という視点に出会ったのです。大切なのは内容を丸ごと写し取ることではなく、自分にとって価値ある1%を見つけること。そう意識を変えたことで、今では年間500冊以上を読むことができています。つまり、読書の本当の価値を理解するだけで、あなたの読書体験も大きく変わるということです。
読書スピードが遅くなる原因
「自分は読むのが遅い」と感じている人は少なくありません。実はその多くが、能力や集中力の問題ではなく「すべてを覚えなければならない」という意識に縛られているのです。私自身、以前はまさにその罠にはまっていました。本を読むときは一言一句を逃すまいとページをめくり、重要そうなところは立ち止まって何度も読み返す。結果として、1冊を読み終えるのに途方もない時間がかかっていたのです。
熟読にこだわっていたころ
当時の私は、約200ページの本を読むのに2日を費やしていました。年間に換算すると30冊程度しか読めません。周囲で「年間100冊読む」と言う人を聞くと、到底追いつけないと落ち込み、ますます熟読にしがみつく悪循環でした。
熟読をやめて気づいたこと
しかしあるとき、そもそも「全部を覚えることは不可能だ」という単純な事実に気づきました。どれだけ丁寧に読み込んでも、時間がたてば忘れてしまう部分が必ずある。そう考えると、熟読への執着はムダな労力にすぎないのです。記憶することにこだわるよりも、むしろ「読みながら心に残った部分だけを拾えばいい」と割り切ったほうが、自然とスピードは上がるものです。
読書の本当の価値とは
では、読書の本当の価値とは何でしょうか。ここで大きなヒントを与えてくれたのが、印南敦史さんの著書『遅読家のための読書術』です。印南さん自身もかつては遅読家でしたが、書評記事を担当することをきっかけに年間700冊を超える多読家へと変わりました。その経験から彼はこう断言しています。「すべてを頭に叩き込むことを前提とした読書ほどムダなものはない」と。

1%のかけらが知恵になる
読書は100%覚えることではなく、心に響いた1%に出会うことにこそ意味があります。むしろ1冊から拾えるのはほんの一片で十分。その小さなかけらを積み重ねていくと、やがて大きな知恵や視点が形づくられていくのです。つまり、読書とは情報を丸暗記する作業ではなく、自分にとって価値のある部分を抽出し、つなぎ合わせていく営みだと言えるでしょう。
熟読より多読がもたらすもの
すべてを記憶しようとする熟読から解放されると、自然と多くの本に触れられるようになります。その結果、異なる分野の知識が結びつき、新しい発想や洞察が生まれやすくなるのです。たとえばビジネス書の一節と小説の物語体験がリンクすることで、自分の中に新しい視野が芽生えることもあります。こうした掛け算のような効果は、1冊を完璧に覚えようとする読み方からは得られないものです。
読書法を変えると何が起きるか
「全部を覚える必要はない」と意識を切り替えるだけで、読書の姿勢は大きく変わります。私自身、熟読の呪縛から解放された結果、年間30冊だった読書量は一気に500冊以上に増えました。量が増えると同時に、内容がつながって新しい気づきが生まれるという相乗効果も得られるのです。
読書のハードルが下がる
「どうせ全部は覚えられない」と思うと、読むことへのプレッシャーがなくなります。すると本を手に取ること自体が気楽になり、ページを進めるスピードも自然に速くなるのです。まるで肩に背負っていた重たい荷物を下ろしたような感覚でした。
本の選び方も変わる
以前は「どの1冊を深く読むか」にこだわっていましたが、今は「どんな小さなかけらを得られるか」という視点で本を選ぶようになりました。たとえ数ページしか心に残らなくても、その断片が後で別の知識と結びつき、大きな発想のきっかけになることがあります。つまり「完璧な1冊を探す」のではなく、「複数の本からエッセンスを拾い集める」姿勢が、学びをより豊かにしてくれるわけです。
まとめ
読書の価値は「100%覚える」ことではありません。本当に重要なのは、自分にとって意味のある1%に出会うことです。小さなかけらを積み重ねていけば、それが大きな知恵となり、やがてあなたの思考や行動を変えていきます。私自身、熟読にこだわっていたころは30冊しか読めなかったのに、この視点に気づいてからは年間500冊以上読めるようになりました。それは単なる量の増加ではなく、異なる知識を組み合わせて新しい発想を生み出せるという質的な変化でもあります。
あなたもまずは「全部を覚えなくていい」と割り切って、本を手に取ってみてください。気楽に読み進めるうちに、自然と読書量が増え、その中で出会う1%があなたの未来を形づくるはずです。